親族内承継の問題点
親族内承継の問題点
中小企業経営者の大半は、世襲として子息・子女・親戚への親族内承継を望んでおられます。しかしながら、一方では後継者の決定要因に「経営能力」を重視するとされています。たとえ血縁・親族であろうと、適任者がいなければ譲らないとう姿勢です。
これは 日々厳しい経営環境に直面しながら、苦労して育てあげ、継続し、さらに発展させたいと 願う経営者であれば当然のことだろうと思います。 事業の発展を願い、長年苦楽を共にしている従業員の生活の安定を願い、 精進努力してきた経営者であればあるほど、この傾向は強いと思います。 安定的に経営していく 厳しさを身をもって体現されているからです。どうしてもこの物差しで 子息子女親戚の承継候補を見てしまうのです。
経営者が、このように厳しく子息子女親戚の承継候補の品定めをしている一方で、「家業は子どもが継ぐもの」という社会的風潮が薄れていく中で成長してきた承継候補たちは、家業に拘束されることなく、自由に職業を選択し、 優秀な子であればあるほど、自分の能力を発揮できる有望分野に情熱を捧げているのです。
承継しようとしている事業規模にもよりますが、残された、さほど優秀とは思えない、家業に対する情熱や覇気も物足りないし、従業員との関係構築、経営スキルも高いほうじゃないと思われる子息子女が家業に従事している場合で、「この子に後を継がせたら将来禍根を残すかもしれない」といった思いがある場合、経営者はこの子息子女へ世襲するか、それ以外の道かを選ぶかを模索することになります。
可愛い我が子への情から「何とか継がせたい」という思いと、「将来うまくやっていけるだろうか」という不安な思いの板挟みになって悩むことになると思います。
親族内承継が減少傾向にあるとはいえ、子息・子女・親戚への承継は、企業内外の関係者にとって、心情的には受け入れやすいという側面をもっています。先代に代わって十分やっていけるだけの高い経営スキルを持った、あるいは今は未熟でも時間をかければ経営スキルを身につける見込のある、熱意と素養を持った子息・子女・親戚がいれば、親族内継承はうまくいくと思います。中長期の計画性を持って、育てながら引き継いでいけば、スムーズにバトンタッチできるはずです。
問題は、親族内にこうした後継者候補がいない場合です。この場合残された道は、事業に精通している従業員への承継、M&A等第三者への承継、廃業になります。
さらに経営者は、自分が亡くなった時に起こるであろう相続争いにも目配せをしておく必要があります。存命中に信頼できる専門家の指導を仰ぎながら、経営権にかかわる株式の譲渡等を済ませておき、会社の運営に混乱をきたさないようにしておく必要があります。
承継をする場合、事業承継に伴う税負担の軽減や民法上の遺留分への対応等、事業承継にかかわる総合的支援策が講じられています「経営承継円滑化法」や事業承継の際の贈与税・相続税の納税を猶予する「事業承継税制」等の支援施策の利用を考えられたほうが負担は軽くなると思います。