80歳以上でもこれだけの人が働いている

 

日本における80歳以上の就労者の実態と主要な職業分野に関する分析レポート

本レポートは、生成AIのGEMINIを利用した記事です。DeepReserchを活用してデーター収集、編集を行ったものです。ほぼ100%がAIの記事です。

 

I. はじめに

超高齢社会における高齢者就労の意義と背景

日本は、世界でも類を見ない速さで高齢化が進む社会であり、その人口構造は労働市場に大きな変革を促しています。総務省統計局のデータによると、2024年9月15日現在、日本の総人口に占める65歳以上人口の割合は29.3%に達し、これは世界で最も高い水準です 。さらに、この高齢化率は2070年には38.7%まで上昇し、現役世代1.3人で1人の65歳以上の高齢者を支える社会が到来すると推計されています 。このような人口構造の変化は、労働力人口の減少という喫緊の課題を浮き彫りにしています。2023年平均で約6,925万人であった労働力人口は、2040年には6,002万人にまで減少するとの推計もあり、経済社会を持続可能なものとして活力を維持するためには、担い手となる労働力人口の維持・確保が急務となっています 。

この人口減少と高齢化の進行という不可逆的な社会構造の変化の中で、高齢者の就労は単なる個人の経済的安定を超えた多面的な意義を持つようになっています。内閣府の調査によると、高齢者が就労を継続する理由としては、経済的な側面に加えて、「社会とのつながりを保つため」や「身体的健康を維持するため」、さらには「生きがい」といった非経済的な動機が強く挙げられています 。仕事を通じて他者と交流し、新しい人間関係を築くことは、精神的な健康の維持に寄与し、日々の生活に活力を生み出すことが指摘されています 。また、長年にわたり培ってきた知識や経験を活かし、社会に貢献することは、個人の役割や存在価値を再確認する機会にもなります 。

特に80歳以上という超高齢層の就労は、彼らの生活の質(QOL)向上に大きく寄与するだけでなく、社会全体の活力維持と労働力不足の緩和に貢献する可能性を秘めています。この年齢層の就労は、単に労働力を補完するだけでなく、多様な経験と知見を社会にもたらし、世代間の交流を促進する上でも重要な役割を果たすと考えられます。したがって、高齢者、特に80歳以上の就労を促進することは、個人の充実した生活と社会全体の持続可能性の両面において、極めて重要な意味を持つ取り組みと言えるでしょう。

本レポートの目的と構成

本レポートは、日本における80歳以上の就労者の実態を、最新の統計データに基づき詳細に分析することを目的としています。具体的には、彼らの就業率、主要な雇用形態、そしてどのような職業分野で活躍しているかを明らかにします。さらに、この年齢層の就労動機、希望する働き方、そして直面する課題についても考察します。これらの分析を通じて、超高齢社会における高齢者就労の現状と今後の展望を提示し、政策立案者や企業、社会福祉関係者が戦略的な計画や施策を検討する上での基礎情報を提供します。

 

II. 高齢者就労の全体像と80歳以上の位置づけ

高齢就業者数と就業率の推移(65歳以上、70歳以上を含む)

日本の高齢者(65歳以上)の就業者数は、近年一貫して増加傾向にあります。総務省統計局のデータによると、高齢就業者数は2004年以降、17年連続で増加し2020年には906万人 、2021年には909万人 、2022年には912万人 、そして2023年には914万人と、20年連続で過去最多を更新しています 。この増加の背景には、「団塊の世代」が65歳、そして70歳以上となり始めたことが大きく影響しています 。

高齢者の就業率も同様に上昇を続けており、2020年には25.1% 、2021年には25.1% 、2022年には25.2% 、2023年には25.2% となっています。年齢階級別に見ると、特に65~69歳の就業率の上昇が顕著で、2020年には49.6% 、2021年には初めて50%を超え50.3% に達し、2023年には52.0%と過去最高を記録しています 。70歳以上についても就業率は上昇傾向にあり、2020年に17.7% 、2021年に18.1% 、そして2023年には70~74歳で34.0%、75歳以上で11.4%と、いずれも過去最高を更新しています 。男女別に見ると、男性の就業率は女性よりも高いものの、いずれも継続的に上昇しています 。

就業者総数に占める高齢就業者(65歳以上)の割合も増加しており、2020年には13.6% 、2021年には13.5% 、2022年には13.6% と過去最高水準を維持しています。これは、日本の就業者のおよそ7人に1人を高齢者が占める状況であることを示しています 。

以下に、年齢階級別の就業率の推移をまとめます。

Table 1: 年齢階級別就業率の推移(主要データ)

年齢階級 2013年 (%) 2015年 (%) 2019年 (%) 2020年 (%) 2021年 (%) 2022年 (%) 2023年 (%)
65~69歳 36.3

49.5

49.6

50.3

52.0

70~74歳 23.3

32.5

34.0

75~79歳 13.4

10.3

16.6

80~84歳 8.1

85歳以上 3.0

65歳以上 19.5

24.3

25.1

25.1

25.2

25.2

注釈: データは各出典の最新年または特定年の情報に基づいています。一部の年齢階級では、特定の年のデータが提供されていない場合があります。

これらのデータが示すのは、高齢者の就業率の持続的な上昇は、単なる人口構成の変化や経済的必要性から生じるものではないということです。むしろ、これは高齢者自身の就労に対する意識の変化と、社会構造の変容が深く関わっていることを示唆しています。高齢者が働く動機は多様化しており、経済的な側面だけでなく、社会とのつながりの維持、身体的健康の促進、そして生きがいの追求といった、生活の質を高める要素が重視される傾向が強まっています 。特に、団塊の世代が70代に差し掛かることで、比較的健康で活動的な層が高齢者就業者の中心となりつつあります。このことは、今後の労働政策や企業の戦略が、単に雇用機会を創出するだけでなく、高齢者の多様な動機に応じた役割や働き方を設計することの重要性を浮き彫りにしています。80歳以上の就労者においても、この傾向はさらに顕著になると考えられ、生産性だけでなく、個人の充実感や社会参加の機会提供に焦点を当てたアプローチが求められるでしょう。

III. 80歳以上の就労者の実態:就業率と雇用形態

80歳以上の就業率の詳細(80-84歳、85歳以上)

高齢者全体の就業率が上昇傾向にある中で、80歳以上の就業率に関する具体的な統計は、他の年齢層と比較して限られています。しかし、長寿医療研究センターのデータは、この年齢層の就労実態をより詳細に示しています。同センターの調査によると、80~84歳の就業率は8.1%、**85歳以上の就業率は3.0%**となっています 。これは、75~79歳の就業率が16.6% であることを踏まえると、年齢が上がるにつれて就業率は大幅に低下するものの、この超高齢層においても一定数の人々が就労を継続している事実を明確に示しています。

内閣府の「高齢社会白書」では、2019年の75歳以上の就業率が10.3%と報告されており、これも上昇傾向にあります 。この「75歳以上」のカテゴリーには80歳以上が含まれますが、80歳以上の具体的な内訳を提供する上で、上述の長寿医療研究センターのデータが最も詳細かつ直接的な情報源となります。総務省統計局の労働力調査では、65~69歳、70~74歳、75歳以上の就業率が示されていますが、80歳以上の具体的な就業率は直接提供されていないため、およびのデータがこの分析において特に重要となります。

雇用形態の傾向(非正規雇用、パート・アルバイトの多さ)

高齢就業者全体の雇用形態を見ると、非正規の職員・従業員が圧倒的な割合を占める傾向が明らかです。総務省統計局のデータによると、役員を除く高齢雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は、2020年には76.5% 、2021年には75.9% 、2022年には76.4% に達しています。この非正規雇用者のうち、パート・アルバイトの割合が最も高く、2020年には52.5%を占めています 。この傾向は、過去10年間で高齢の非正規雇用者が大幅に増加しているというトレンドと一致しています 。

シニア層(60~74歳)を対象とした調査でも、「アルバイト・パート」を希望する割合が約6割と最も高く、年齢が上がるにつれてその傾向が強まることが示されています 。このことは、80歳以上の就労者においても、体力的な負担の軽減や柔軟な働き方を求めてパート・アルバイトといった非正規雇用形態を選択する傾向が強いことを強く示唆しています。介護業界の雇用形態に関する情報も、パート・アルバイトや登録ヘルパーが短時間勤務や柔軟な働き方を可能にすることを示しており、これは高齢者が求める働き方と一致しています 。

以下に、高齢就業者の従業上の地位別内訳と雇用形態の傾向をまとめます。

 

Table 2: 高齢就業者の従業上の地位別内訳と雇用形態(非正規雇用の割合)

項目 2020年 (万人 / %) 2021年 (万人 / %) 2022年 (万人 / %)
高齢就業者総数 906万人 909万人 912万人
役員を除く雇用者 510万人 (57.0%)

517万人 (57.6%)

529万人 (58.7%)

自営業主・家族従業者 275万人 (30.7%)

270万人 (30.1%)

263万人 (29.2%)

会社などの役員 110万人 (12.3%)

111万人 (12.4%)

109万人 (12.1%)

高齢雇用者の雇用形態別内訳
正規の職員・従業員 120万人 124万人
非正規の職員・従業員 390万人 (76.5%)

393万人 (75.9%)

404万人 (76.4%)

うちパート・アルバイト 52.5%

52.2%

注釈: 割合は役員を除く雇用者全体に占める割合です。2022年の正規・非正規の内訳は提供されていません。

80歳以上の就労者が存在するという事実は、この年齢層にとって仕事が極めて選択的かつ意図的な活動であることを示唆しています。彼らにとっての就労は、単に経済的な必要性から来るものではなく、社会とのつながり、健康維持、生きがいといった非経済的な動機が、あるいはそれ以上に重要な要素となっていると考えられます。この年齢層の就労形態が非正規、特にパート・アルバイトに大きく偏っているのは、年齢に伴う体力的な制約を考慮し、柔軟な勤務時間や日数を求める彼らの希望が反映された結果と言えます。これは、企業や社会が80歳以上の就労を支援する上で、従来のフルタイム雇用モデルに固執するのではなく、彼らのニーズに合わせた柔軟で負担の少ない役割を創出することの重要性を示しています。このようなアプローチは、高齢者が自身のペースで社会と関わり続け、充実した生活を送るための基盤となり、同時に社会全体の活力維持にも貢献するでしょう。

IV. 80歳以上の就労者に多い職業分野と具体的な職種

高齢就業者(65歳以上)に多く見られる産業分野の傾向

高齢就業者(65歳以上)が最も多く従事している産業は、複数の統計で一貫して「卸売業,小売業」であることが示されています。この産業の高齢就業者数は、2020年に128万人 、2021年に130万人 、2023年には132万人 と推移しており、高齢者の主要な就業先となっています。

次いで高齢就業者が多い産業としては、「農業,林業」(2020年106万人 、2021年104万人 、2023年99万人 )、「サービス業(他に分類されないもの)」(2020年104万人 、2021年103万人 、2023年104万人 )、そして「医療,福祉」(2020年92万人 、2021年101万人 、2023年107万人 )が挙げられます。特に「医療,福祉」分野は、過去10年間で高齢就業者数が約2.4倍に増加しており、超高齢社会におけるニーズの高まりを反映しています 。

各産業の就業者総数に占める高齢就業者の割合で見ると、「農業,林業」が最も高く、2020年に53.0% 、2021年に53.3% 、2022年に52.6% 、そして2010年には49.3% と、常に過半数を占めています。これは、農業・林業が伝統的に高齢者の就労が多い産業であることを示しています。次いで割合が高いのは「不動産業,物品賃貸業」(2020年26.4% 、2021年26.8% 、2022年27.0% 、2010年24.0% )、「サービス業(他に分類されないもの)」(2020年23.0% 、2021年22.8% 、2022年22.7% 、2010年21.2% )、「生活関連サービス業,娯楽業」(2020年18.7% 、2021年19.4% 、2022年19.1% 、2010年18.4% )となっています。

以下に、高齢就業者に多い主な産業別の内訳と、各産業における高齢就業者の割合をまとめます。

 

Table 3: 高齢就業者に多い主な産業別内訳と高齢就業者の割合

産業分類 2020年 (万人 / %)

2021年 (万人 / %)

2022年 (万人 / %)

2023年 (万人)

卸売業,小売業 128万人 / – 130万人 / – 132万人
農業,林業 106万人 / 53.0% 104万人 / 53.3% – / 52.6% 99万人
サービス業(他に分類されないもの) 104万人 / 23.0% 103万人 / 22.8% – / 22.7% 104万人
医療,福祉 92万人 / – 101万人 / – 107万人
製造業 92万人 / –
不動産業,物品賃貸業 – / 26.4% – / 26.8% – / 27.0%
生活関連サービス業,娯楽業 – / 18.7% – / 19.4% – / 19.1%

注釈: 高齢就業者数の割合は、各産業の就業者総数に占める高齢就業者の割合を示します。一部のデータは提供されていません。

 

80歳以上が実際に活躍している具体的な職種例と特徴

80歳以上の就労者に関する具体的な職種別の網羅的な統計データは限られていますが、65歳以上の高齢者に人気の職種や、個別の成功事例から、この年齢層がどのような職場で活躍しているかの傾向を推察することができます。全般的に、体力的負担の少ない仕事、柔軟な勤務が可能な仕事が好まれる傾向にあります 。

具体的な職種例とその特徴は以下の通りです。

  • マンション管理人・受付: 建物内の見回り、清掃、来訪者・業者対応、共用設備点検などが主な業務です。業務は自分のペースで進められ、体力的な負担も少ないため、シニアに人気の職種です 。午前中のみや週2~3日といった柔軟なシフトが多く、定年後の再スタートに適しています 。豊中市の事例では、80歳代の男性が週1~2回、宿直業務に従事しているケースが報告されています 。
  • 清掃業: オフィスや施設の簡単な掃除を行う仕事で、短時間勤務が可能であり、特別なスキルが不要なため、初心者でもすぐに始められる点が魅力です 。80歳代の成功事例も報告されており、体を動かすことで健康維持にもつながるとされています 。
  • 介護補助・家事代行: 介護分野は年齢制限がなく、超高齢社会においてニーズが高い安定した仕事です。身体介護を伴わない介護補助や、掃除・料理・洗濯などを行う家事代行は、未経験から短時間で始めやすい仕事として人気があります 。利用者と年齢が近いことで自然な寄り添いができ、感謝される場面も多く、やりがいを感じやすいとされます 。
  • 農業支援員・ガーデニングスタッフ: 地域の農家を手伝う仕事や、庭や公共の緑地での軽作業です。体を動かしながら自然に触れることで、心身のリフレッシュ効果も期待できます 。80歳代で農業に従事する成功事例も報告されています 。
  • 事務・軽作業: 正社員では「事務」を希望するシニアが多く、これは「屋内での座り仕事であれば身体への負担が少ない」というイメージから消極的に選択される傾向があります 。また、小規模な組立作業や簡単なパッキングなど、座りながらできる軽作業のパートタイムも、体力的な負担が少なく、無理なく続けられる仕事として選ばれています 。家電量販店のノジマでは、80歳を超えた従業員が中小物商品の接客や、搬入された商品の確認・仕分けといったバックヤード業務に従事している事例が複数報告されています 。これらの業務は、身体的な負担が少なく、丁寧さや細やかさが求められる特性があります。
  • 講師・指導者: 長年の教員経験や特定の知識、趣味、特技を活かしたい方におすすめです。家庭教師として子どもたちに学習支援を行ったり、シニア向け講師としてパソコン、健康体操、手芸など多岐にわたる分野で経験談を交えながら教えたりすることができます 。自分のペースで働け、「教える」ことは自身の学びにもつながり、大きなやりがいを得られる職種です 。81歳で陶芸の講師を務める事例も報告されています 。
  • その他: 学童スタッフ、保育補助、配送スタッフ(軽貨物)、宿直スタッフ、ベビーシッター、飲食店のホールスタッフ、商品管理スタッフなど、多様な職種で高齢者が活躍しています 。特に注目すべきは、84歳の女性がスーパーで人事関連、仕入伝票入力、請求書チェック、レジでの接客といった多岐にわたる業務をこなしている事例です 。これは、年齢に関わらず、個人の能力と経験が適切に評価されれば、多様な業務で活躍できる可能性を示しています。

これらの職種例から、80歳以上の就労における重要な傾向が浮かび上がります。それは、彼らが自身の豊富な経験、知識、そして長年培ってきたソフトスキル(例えば、丁寧な接客、細やかな気配り、指導力など)を最大限に活用しつつ、身体的な負担を最小限に抑える働き方を求めているという点です。企業がこの年齢層の労働力を活用するためには、単に定年延長を検討するだけでなく、職務内容を再設計し、タスクを細分化することで、身体的負担の少ない役割を創出することが不可欠です。これにより、高齢者が持つ価値を最大限に引き出し、同時に彼らが安心して長く活躍できる環境を提供することが可能となります。

V. 80歳以上の就労動機と働き方の希望

就労を継続する主な理由(経済的側面、社会とのつながり、健康維持、生きがい)

高齢者が就労を継続する動機は、多様化していることが複数の調査で示されています。最も多い理由は「生活費を得るため」であり、2025年の調査では54.6%の回答者がこれを挙げています 。しかし、これに拮抗する形で「社会とのつながりを保つため」(43.0%)や「身体的健康を維持するため」(42.1%)といった非経済的な動機が挙げられており、必ずしも経済的な側面だけが就労の理由ではないことが示されています 。

特に80歳以上の超高齢層においては、健康維持、社会とのつながり、経済的安定、そして自己実現が働く主な理由として挙げられています 。仕事を通じて他者と交流し、新しい人間関係を築くことは、精神的な健康の維持に繋がり、日々の生活に活力を生み出す効果があるとされています 。また、長年にわたる知識や経験を活かし、他者に貢献することは、自身の役割や存在価値を再確認する機会となり、大きな生きがいとなる側面もあります 。内閣府の調査でも、収入のある仕事をしている人は「生きがい」を感じる割合が高いことが示されており 、就労がこの年齢層の生活の質を高める重要な要素となっていることが伺えます。

 

希望する勤務日数・時間、年収水準

シニア層(60~74歳)を対象とした調査では、希望する雇用形態として「アルバイト・パート」が約6割と最も高く、年齢が上がるにつれてこの傾向が強まることが示されています 。これは、柔軟な働き方への強いニーズを反映しています。

希望する勤務日数については、「週3日程度」が42.2%と最も高く、「週4日程度」が27.2%と続きます 。しかし、企業が雇用しているシニア従業員の実態では「週5日勤務」が36.0%と最も多く、希望との間に乖離があることが指摘されています 。この乖離は、高齢者が求める柔軟な働き方と、企業が提供する雇用形態とのミスマッチを示唆しています。

勤務時間については、フルタイムのような働き方を希望するシニアは少なく、実態ではアルバイト・パートの2割が「8時間以上」勤務しているものの、希望では「8時間以上」は4.9%と低く、「1日3~5時間程度」の比較的短い時間へのニーズが高い状況です 。実際に、80歳以上を積極的に採用している企業では、体力面に配慮し、1日3~5時間程度、週1~3日程度の勤務形態を提供している事例が報告されています 。

希望する年収については、調査によって若干の差異が見られますが、シニア層が必ずしも高い報酬を求めていない傾向が共通しています。ある調査では、「50万円~100万円未満」が41.2%、「50万円未満」が31.0%と、100万円未満を希望する層が7割強を占める結果が出ています 。これは、収入よりも「働きがい」や社会とのつながりを重視する傾向があることを示唆しています 。一方で、別の調査(65~74歳対象)では希望年収が「300万円~400万円未満」とされており 、これは調査対象の年齢層や雇用形態の定義によって希望年収に差が出ている可能性があります。しかし、80歳以上という年齢層においては、より低い年収でも就労意欲を持つと推測され、生活費の補填とQOL向上のバランスを重視する傾向が強いと考えられます。

以下に、高齢者の就労理由と希望する勤務条件をまとめます。

 

Table 4: 高齢者の就労理由と希望する勤務条件(日数・時間・年収)

項目 詳細 出典
就労理由 生活費を得るため: 54.6% (1位)

社会とのつながりを保つため: 43.0% (2位)

身体的健康を維持するため: 42.1% (3位)

仕事自体が面白い・知識・能力が活かせるため: 21.9%

生きがい: 収入のある仕事をしている人が感じやすい

希望する雇用形態 アルバイト・パート: 約6割 (年齢が上がるほど増加)

希望する勤務日数 週3日程度: 42.2% (希望)

週4日程度: 27.2% (希望)

週5日勤務: 36.0% (実態)

希望する勤務時間 1日3~5時間程度: 高いニーズ

1日8時間以上: 4.9% (希望) / 20% (実態)

希望する年収 50万円未満: 31.0%

50万円~100万円未満: 41.2%

300万円~400万円未満: 高齢者全体の希望年収

高齢者の就労動機が「経済的自立」だけでなく、「QOL向上」へとシフトしていることは、企業や社会が彼らの労働力を活用する上で極めて重要な意味を持ちます。高齢者が仕事に求めるのは、単に収入を得ることだけではなく、社会との接点を持ち、自身の健康を維持し、日々の生活に充実感や生きがいを見出すことであるという認識が必要です。この動機の変化に対応するためには、企業は従来の労働時間や賃金体系に捉われず、柔軟な勤務形態や、高齢者の経験と知見を活かせる役割を積極的に創出していく必要があります。例えば、短時間勤務、週単位での勤務日数調整、リモートワークの導入、あるいはメンターやアドバイザーといった専門的ポジションの創出などが考えられます。このような対応は、高齢者個人のウェルビーイングを高めるだけでなく、企業にとっても多様な人材の活用、組織の活性化、そして社会貢献という多角的なメリットをもたらすでしょう。

 

VI. 80歳以上の就労における課題と支援策

就労者が直面する課題(体力・健康面、仕事探しの困難、エイジズム)

80歳以上の就労者が直面する課題は多岐にわたります。最も顕著なのは、体力・健康面への配慮です。高齢者、特に超高齢層では、加齢に伴う身体機能の低下が避けられず、これが労働災害のリスクを高める要因となります 。厚生労働省のデータによると、雇用者全体に占める60歳以上の割合が18.7%であるのに対し、労働災害による休業4日以上の死傷者数に占める60歳以上の割合は29.3%と高く、年々増加傾向にあります 。特に60歳以上の女性の労働災害発生率は、30代女性の約4倍とされており、性別によるリスクの違いも考慮する必要があります 。企業は、高齢者の健康状態に配慮した業務内容の割り振りや、安全な職場環境の整備が不可欠となります。

次に、仕事探しの困難と希望職種とのミスマッチが挙げられます。働きたい意欲を持つシニア層は多いものの、実際に仕事を見つけることに苦戦している実態があります。ある調査では、就労意欲のある非就業者層の約半数(53.7%)が「仕事探しをしたものの仕事が見つかっていない」と回答し、22%が「仕事探しを辞めてしまった」と報告されています 。ハローワークで職を探す65歳以上の有効求職者数は2023年に25万人を超え、10年で2.2倍に増加していますが、シニアが希望する職種(事務系など)と、労働市場で人手不足となっている分野(運輸、警備、介護福祉など)との間にミスマッチが生じていることが課題とされています 。

さらに、**エイジズム(年齢差別)**も深刻な課題です。高齢者に対して「加齢により認知能力や体力が著しく低下する」といった負の先入観が向けられやすく、これが年齢差別につながり、職務満足度や精神的健康に悪影響を及ぼすことが指摘されています 。実際には、高年齢者の認知能力は一様に低下するわけではなく、言語理解やワーキングメモリは50~60歳頃まで比較的高水準を維持しており、仕事へのモチベーション指標であるワーク・エンゲージメントは年齢とともに上昇する傾向があるという研究結果もあります 。しかし、こうした実態が十分に理解されていないことが、高齢者の就労機会を阻害する要因となっています。

また、賃金水準の低下も就労意欲に影響を与えます。いわゆる「60歳の崖」と呼ばれるように、定年後の賃金が定年前と比較して大きく減少する傾向があります 。国税庁の調査では、50代後半の平均給与が545万円であるのに対し、70歳以上では293万円と大幅に減少しています 。近年、定年後の賃金水準は改善傾向にありますが、依然として高齢者の就労意欲を維持・向上させるための処遇改善が企業に求められています 。

企業・社会が取り組むべき支援策

これらの課題に対応するため、企業や社会は多角的な支援策を講じる必要があります。

  • 高年齢者雇用安定法の改正と努力義務の推進: 2021年に施行された改正高年齢者雇用安定法により、企業には65歳までの雇用確保義務に加え、70歳までの就業機会を確保する努力義務が課されています 。しかし、2023年6月1日現在で70歳までの就業確保措置を実施している企業は29.7%にとどまっており、厚生労働省は指導や啓発、専門家による相談・援助、助成金の支給などを通じて、この実施率の向上を図っています 。
  • 助成金制度の活用: 厚生労働省は、「65歳超雇用推進助成金」を提供しており、これは65歳以上への定年引上げ、高年齢者の雇用管理制度の整備、高年齢の有期契約労働者の無期雇用転換などを実施した事業主に対して助成を行うものです 。この助成金は、高年齢者が意欲と能力のある限り年齢に関わりなく働くことができる「生涯現役社会」の実現を目的としています 。
  • 柔軟な働き方の提供とジョブデザイン: 高齢者の希望する働き方(週3~4日、1日3~5時間程度の短時間勤務)と実際の勤務実態との乖離を解消するため、企業はより柔軟な勤務形態を提供し、職務内容を見直すジョブデザインに取り組む必要があります 。これにより、体力的な負担を軽減しつつ、高齢者が自身のペースで長く活躍できる環境を整備することが可能となります。
  • 労働災害防止対策の強化: 高年齢労働者の労働災害防止は喫緊の課題です。厚生労働省は「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)の周知や、エイジフレンドリー補助金による中小企業支援を進めています 。しかし、ガイドラインの認知度や対策の実施率は依然として低く、対策の重要性に対する理解を深めるための啓発活動がさらに求められます 。
  • スキルアップ・リスキリング支援の拡充: 高年齢層のOFF-JT受講時間や自己啓発の実施率は低い傾向にあるため、厚生労働省は「キャリア形成・リスキリング推進事業」により中高年齢層のキャリア形成支援を強化しています 。高齢期を見据えた早い段階からのスキルアップや、主体的に学習内容を選択できる機会の充実が不可欠です。
  • マッチング機能の強化: ハローワークに設置されている「生涯現役支援窓口」では、専門職員によるきめ細かな相談援助や、企業訪問を通じて短時間勤務や作業の分類・切り分けを促すなどの工夫が行われています 。高齢者の希望職種と労働市場のニーズとのミスマッチ解消に向けた、より効果的なマッチング機能の強化が期待されます。
  • エイジズムの解消と意識改革: 高年齢人材を単なる労働力としてではなく、豊富な経験や知識、成熟した判断力を持つ貴重な戦力として捉える意識改革が社会全体で必要です 。高年齢者の認知能力やワーク・エンゲージメントに関する正しい理解を広め、年齢差別をなくし、何歳になっても明日にワクワクできる「Age-Well」な社会の実現を目指すことが重要です 。

高齢者就労の持続可能性は、健康・安全管理とエイジズムの克服にかかっています。高齢者が安心して働き続けられるためには、企業が身体的・精神的健康への配慮を組織文化に根付かせ、エイジフレンドリーな職場環境を整備することが不可欠です。これには、単なる制度導入だけでなく、職務内容の柔軟な見直し、安全対策の徹底、そして年齢に関わらず個人の能力と経験を正当に評価する人事制度の構築が含まれます。社会全体としても、高齢者に対する固定観念を払拭し、多様な働き方を尊重する意識を醸成することが求められます。これらの取り組みが連携することで、高齢者が自身の能力を最大限に発揮し、社会に貢献し続けることが可能となり、結果として社会全体の活力を高めることに繋がるでしょう。

 

VII. 結論と今後の展望

本レポートでは、日本における80歳以上の就労者の実態について、統計データに基づき詳細な分析を行いました。その結果、以下の点が明らかになりました。

まず、日本の高齢者就業率は全体として上昇傾向にあり、就業者数も過去最多を更新し続けています。この中で、80歳以上の就業率は、80~84歳で8.1%、85歳以上で3.0%と、他の年齢層と比較して低いものの、この超高齢層においても一定数の人々が就労を継続していることが確認されました。彼らの多くは、体力的な負担が少ないパート・アルバイトといった非正規雇用形態を選択しており、これは柔軟な働き方を求める彼らのニーズと合致しています。

次に、80歳以上の就労者が多く活躍する職業分野としては、高齢者全体の傾向と同様に「卸売業,小売業」、「農業,林業」、「サービス業(他に分類されないもの)」、「医療,福祉」が挙げられます。具体的な職種としては、マンション管理人、清掃業、介護補助、家事代行、農業支援員、事務・軽作業、講師・指導者など、身体的負担が少なく、これまでの人生経験や知識、ソフトスキルを活かせる仕事が中心となっています。

そして、80歳以上の就労動機は、経済的な側面に加えて、「社会とのつながりの維持」、「身体的健康の促進」、そして「生きがい」の追求といった、生活の質(QOL)向上に資する非経済的要素が極めて重要であることが示されました。彼らは、週3~4日程度、1日3~5時間程度の短時間勤務を希望し、年収についても高額を求めるよりも、自身のペースで無理なく働けることを重視する傾向が見られます。

これらの分析から、80歳以上の就労は、個人の「経済的自立」だけでなく、「QOL向上」への動機シフトが顕著であり、企業や社会はこれに対応した柔軟な働き方や役割の提供が不可欠であるという結論に至ります。

今後の展望として、超高齢社会における80歳以上の就労をさらに促進し、持続可能なものとするためには、以下の多角的な取り組みが求められます。

企業側が取り組むべき事項:

  • 柔軟な勤務形態のさらなる導入とジョブデザインの見直し: 80歳以上の就労者の体力やライフスタイルに合わせた、週単位や日単位での勤務日数・時間の柔軟な設定、リモートワークの導入、そして職務内容の細分化や再設計を推進し、身体的負担の少ない役割を創出することが重要です。
  • 高齢者の経験・知識を活かす役割の創出: 長年のキャリアで培われた専門知識、人生経験、コミュニケーション能力といった高齢者ならではの強みを最大限に引き出す、メンター、アドバイザー、品質管理、顧客対応などの役割を積極的に設けるべきです。
  • エイジフレンドリーな職場環境の整備と労働災害防止対策の徹底: 高齢者の身体的特性に配慮した作業環境の改善、安全教育の徹底、定期的な健康チェックの推奨など、労働災害のリスクを低減し、安心して働ける職場環境を構築することが不可欠です。
  • 賃金体系の改善と評価制度の確立: 高年齢雇用継続給付の縮小も踏まえ、高齢者の就労意欲を維持・向上させるための公平で納得感のある賃金体系を構築し、年齢ではなく能力や貢献度に基づいた評価制度を確立することが求められます。

社会・政府側が取り組むべき事項:

  • 高齢者雇用を促進する助成金制度の継続と拡充: 企業が高齢者雇用に積極的になれるよう、「65歳超雇用推進助成金」のような制度を継続し、その対象範囲や補助内容を高齢者の多様なニーズに合わせて拡充していく必要があります。
  • ハローワーク等のマッチング機能の強化と多様な働き方の情報提供: 高齢者の希望と企業のニーズとのミスマッチを解消するため、ハローワークの「生涯現役支援窓口」のような専門的な相談・支援体制を強化し、短時間勤務や特定のスキルを活かせる求人情報を積極的に提供すべきです。
  • リスキリング支援の強化と生涯学習機会の拡充: 高齢期においても新たな知識やスキルを習得し、変化する労働市場に対応できるよう、政府はリスキリングプログラムへの支援を強化し、生涯にわたる学習機会を充実させる必要があります。
  • エイジズム解消に向けた社会全体の意識改革と啓発: 高齢者に対する固定観念を払拭し、年齢に関わらず個人の能力や意欲を尊重する社会的な意識を醸成するための啓発活動を強化することが重要です。
  • 在職老齢年金制度の見直し: 就労意欲を阻害する可能性が指摘されている在職老齢年金制度について、高齢者の就労を促進する観点から、制度の見直しや将来的な廃止に向けた議論を加速させるべきです。

これらの取り組みが複合的に機能することで、日本は「人生100年時代」を見据えた真の「生涯現役社会」へと移行することができるでしょう。80歳以上の人々が、自身の望む形で社会と関わり、経験と知恵を次世代に伝え、生きがいを感じながら活躍し続ける未来は、個人の幸福だけでなく、社会全体の持続的な発展と活力に不可欠な要素となります。

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