事業承継 M&A等 第三者への事業承継の問題点

M&A等第三者への承継の問題点

M&A等第三者への承継の問題点

M&A等による第三者承継は、0~5年前で39%まで増加しています。親族や従業員への承継が難しい場合いは「M&A等第三者承継」か「廃業」かに絞られます。

 

親族、従業員、その他の関係者から後継者が見つからなくて、仕方なしに廃業される経営者が年間数万人いらっしゃいますが、仕方なしにとはいえ、廃業はデメリットが大きく、従業員の雇用も継続されませんし、最悪、大きな負債が経営者に残り続ける場合もあります。

 

廃業の決定要因は「後継者がいないから仕方ない」というあきらめにあるようですが、検討して頂きたいのが「M&A等第三者承継」です。この承継がうまくいきますと従業員の雇用は維持されます。これは廃業に比べると大きなメリットです。

 

既にこの M & A を利用した経営者の多くは、「現在の従業員の雇用を確保し続けることができるならば」という思いで踏み切られています。

 

このことは、買い手企業を選ぶ場合に「企業価値を高く評価してくれたが従業員の雇用は保障しない」という会社を選んだ経営者は約2割だったのに対して、「企業価値を低く評価されても、従業員の雇用を保障してくれる会社」を選んだ経営者が7割もいたことから、いかに従業員の雇用継続を願っていたかがわかります。会社の売価が下がっても、従業員の雇用を優先させた経営者が多かったわけです。このことから、中小企業経営者が事業売却を考える際に、自分の儲けよりも従業員の雇用を優先させていることがわかります。

 

中小企業レベルでの M & A が伸びてきている原因は、 敵対的 TOB といった、大企業の M & A に比べ、 友好的であるからと考えられます。

 

一般的に中小企業は、上場していませんので株式を公開していません、 このためTOB等の「敵対的買収」はほとんど起こり得ないのです。 中小企業レベルでの M & A は、売主と買主の合意のもとで行われる友好的な買収と言えるのです。 売却価格よりも今まで経営者と苦楽を共にしてきた従業員の今後を第一に考えるといった買収が多いのです。売却先を「企業価値の算定額は低くなっても、従業員の雇用は保障するという会社」を希望される経営者が大半なのです。

 

ところが経営者の多くは、友好的なM&Aと言う概念が理解できず、大企業が行う敵対的買収や乗っ取りのイメージを強く持っておられます。これがM&Aに躊躇され、検討もせず、あきらめて、廃業されている原因のように思われます。

 

中小企業のM&Aは、売主と買手の双方がお互いに尊重し合って決定する友好的なM&Aがほとんどだということを理解され、覚悟されている廃業を見直し、再検討してみれば、心配事であった従業員の雇用問題は解決するかもしれないのです。従業員のためにも、そして経営者自身のためにも、今一度、中小企業の昨今のM&Aの実態を調べられて、頭の中のM&Aに対する固定観念をリセットされ、行動を起こされたほうが活路が開けて来るのではないでしょうか。その結果が駄目なら、その時点で判断すればいいのだと思います。

 

中小企業のM & Aにも、戦略的M & Aがあります。買い手によっては、 相手の会社の営業権が欲しい、 あるいは客先が欲しい、 この部門の技術が欲しい、 この技術のノウハウが欲しい、といった全体ではなく部分を欲しがっている場合があります。 これは買い手が自社の弱い部分を補強して体制を強化する場合に使う部分的M & Aです。

 

こういう場合、その部門を分社化して企業価値を上げて売却するという手法がとられることがあります。 しかしながら売却価値はアップするでしょうが、雇用を継続できるのはその部門の従業員だけになります。

 

残された会社も買収相手以外の会社に売却できれば問題ありませんが、できなければ残った会社の従業員の雇用の継続はできないことになります。それでも廃業よりマシと考えることができるかどうかで、進めるか進めないかを判断することになると思います。

 

反対に、その部門を盾にして、全体を売却するという手法を取る場合もあると思います。これがうまく行かない場合は「振出しに戻り」、全体を買収してくれる会社を探すことになると思います。

 

一般的にいって中小企業の場合、技術力、営業力、生産力、経営管理力といった「○○力」は、組織に宿っているというよりは、人に宿っている場合が多いと思います。このような場合、買い手が事業を買収するということは、人を引き取ることだと理解して、それなりの待遇案を提示しなければ、辞められることもあります。もぬけの殻の会社を買う羽目になってしまいかねません。雇用の継続は買い手・売りて双方にとって大事なことだと思います。

 

特に、売り手側はM&Aを秘密裏に進めますので、これを公にした時の従業員の動揺、不安、不満を如何に治めるかが大事になってきます。

 

新進のIT企業を買い取る場合など、中枢のエンジニアの雇用継続が大事になります。会社の資産はパソコンだけで、技術力は社員の頭の中にありますから、その社員がM&A並びにその後の人事、待遇を不満に思い退職でもすることになれば、買い取った会社の技術力、施工力はそこで途切れてしまいます。

 

これはIT企業買収で実際に起こった事です。15名くらいいたエンジニアのうちチーフクラスのエンジニアの中核3人が、買収後の待遇を不満に思い退職してしまったのです。この結果この会社は仕事をまとめ切れる人がいなくなり、受注していた案件を納めきれなくなり、機能しなくなり、つぶれてしまいました。

 

中小企業の経営者の多くはまだ、「M&Aは大企業が行うもの」「企業が乗っ取られるのでは?」というM&Aに対する暗いイメージを持たれていると思いますが、実際には上記のような敵対的なM&Aは非常に少ないのが現実です。現在は中小企業を中心に様々な会社が友好的なM&Aを選択され、事業の承継に成功されています。従来の固定観念を捨てて、友好的M&Aに、前向きに取り組んで頂ければ幸いです。

 
中小企業の事業承継とM&A


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